2022年3月29日、Synspectiveは、損害保険ジャパン株式会社、野村スパークス・インベストメント株式会社、Pavilion Capital Pte. Ltd.などからシリーズBラウンドによる第三者割当増資および融資により119億円の大型資金調達を実施したことを発表。シリーズAに続く国内最大規模であり、創業以来、累計228億円の資金を調達することができました。なぜ、このような大型資金調達な可能だったのか?Synspectiveで資金調達を担当する志藤GMと杉崎さんに、お話を聞いてみました。

 

取締役/管理部ゼネラルマネージャー
志藤 篤

新日本有限責任監査法人等で約9年間、会計監査業務、内部統制構築支援、IPO支援、財務デューデリジェンス業務に従事。その後、スタートアップ企業を共同創業し、CFOとしてベンチャーキャピタル、大手事業会社等から大型の資金調達を行い、会社を成長ステージへ導く。個人でのスタートアップ支援事業や上場準備企業の社外監査を経て、Synspectiveに参画。公認会計士。

 

 

Finance, Corporate Administration
杉崎 亜実

米国石油メジャーの日本支社ファイナンス部門に入社、約6年に亘り事業投資判断、業績分析、連結決算・開示業務等を経験。専門性を深めるため、独立系PEファンドへ転職。ファンド管理全般、国内外機関投資家対応、海外のGP・アドミニストレーター・弁護士等への指図等、ミドル・バックオフィス業務を一手に担当。モノづくり・社会インフラを事業とする会社で上場経験を積むため、Synspectiveに入社。Synspectiveでは、日常的な投資家とのコミュニケーションを担当している。

 

 

■大型の資金調達ができた3つの理由とは?

 

理由その1:宇宙産業市場のポテンシャル・将来性

(志藤)理由の一つとして、宇宙ビジネス市場の盛り上がりが挙げられます。 世界各国の政府で宇宙産業を育成する動きがトレンドとなっていて、日本政府の宇宙予算も年々増加傾向にあります。そして、宇宙産業の中でも特に衛星データ市場が、防衛予算の増加等により今後伸びていくことが予想されています。ヨーロッパを中心とする不安定な世界情勢もあり、国防的な観点からも衛星データのニーズが、これまで以上に高まってきました。

 

理由その2:Synspectiveの事業への期待

(志藤)数ある宇宙スタートアップ企業の中でも、とりわけSynspectiveへの期待は大きいと感じています。

Synspectiveの事業の柱である小型SAR(レーダー)衛星の分野は、一般的には技術的にハードルが高いと言われていて、プレーヤーが簡単には参入できない市場です。宇宙産業におけるセグメンテーションの中でも、SAR衛星データというのは有望な市場であるにも関わらず、今のところ実際に小型SAR衛星を運用できている企業は世界的にみても数社ほどしかありません。

 

(杉崎)SAR衛星データについては、世界的に需要に供給が追いつかず、SAR衛星データを購入したい企業などが多いのに、データが入手できないという状況です。また、データ販売というビジネスモデルがマネタイズしやすいという点もあります。宇宙関連ビジネスの中では、相対的に見て売り上げが立つタイミングが早く、キャッシュを得られるポイントが早いことも、投資家に響いたのではないかと考えます。

 

理由その3:Synspectiveという会社に対する期待

(志藤)Synspectiveが、小型SAR衛星を実際に打上げて運用し、画像を取得し、既にデータ販売を開始している、という実績を示せたのも大きかったですね。衛星データを活用したソリューションについても、いくつかローンチし、実際にお客様にも使ってもらっていることもあり、今後も成長する会社であるということを感じていただけたと思います。

 

(杉崎)そうですね。実際に契約も取れ、JICAや世界銀行との共同プロジェクトへの参加や有力な企業とのパートナーシップも始まったという実績の積み重ねも評価されたのだと思います。他にも、シリーズBの資金調達が上手くいった理由の一つとして、Synspective社内の管理体制が整っている点も挙げられます。経理、法務及び内部管理体制が整っていて上場に向けた審査も進んでいてIPOが見えていることを示せたことで「盤石ですよ」というのが伝わった点も大きいですね。

 

 

 

 

■海外VCからの投資と融資契約が入ったシリーズB

 

ー前回のシリーズAとの違いは?

(志藤)シリーズAは、衛星を打ち上げる前にクロージングでした。世界における宇宙業界においても、小型SAR衛星はこれから間違いなく拡がっていくという共通認識として持ってもらい、その中でSynspectiveが有力なプレーヤーとして認識されたこと、そして実現できそうなメンバーが創業メンバーとして集まっていた点が評価され、実績がない中で、将来の期待感で資金調達をやり遂げました。一方、シリーズBは、実際に一号機が打ち上がった後での実施でした。既に販売を開始していたソリューションのお客様である損害保険ジャパン株式会社様や戦略パートナーである株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル様なども投資してくれました。ソリューションの販売を通じて築いた信頼関係があったからこそ、Synspectiveの今後の成長に期待いただき、資金を提供してくれたのだと思います。

 

(杉崎)シリーズAとの違いで言うと、シリーズBでは海外投資が入っている点もあります。世界でも高い評価を得ている投資会社のひとつで、東南アジアを中心に投資を実施しているシンガポールのPavilion Capital様に大きな額を投資いただきました。Synspectiveがシンガポールに子会社オフィスを置き、業界のキープレーヤーを採用できたことで、シンガポールでの存在感が高まったことが影響していると思います。また、Synspecitveのメインターゲットがアジアという点やデータ販売だけではなくソリューション販売も行うビジネスモデルも高く評価いただきました。

加えて、今回から借入が入っています。リスクはあるけど成功する、という期待のもとで実施されるのが投資ですが、融資というのは確実に返済してくれるという確証がない限りお金を貸してはくれません。金融機関の審査は厳格で、上場できそうか、会社の事業は有望か、をしっかり審査しています。その審査を通ったということは、経営の安定した信用のある企業だと証明ができたのだと考えています。

 

ー今回の資金調達で苦労した点は?また、それをどう克服したのか?

(志藤)投資家の中では「宇宙業界には投資しにくい」という共通認識があり、当初は新規の投資家が入りづらかったです。IT企業であれば、10億・20億あれば上場までいける場合もあるのですが、宇宙ビジネスは規模が大きいので、ファンド全体の金額に占める当社への投資額の割合が大きくなり中々投資がしづらいという事情があります。しかし、既存株主との良い関係性を築いてきたことが功を奏し、シリーズAから投資してくださっている方達が追加投資を決めてくれたことで、流れが変わりました。また、同時期に進捗も示せるプロジェクトやパートナーシップを発表し、小型SAR衛星2号機「StriX-β」の打ち上げにも成功しました。既存株主の後押しと、全社員で成し遂げた事業進捗がなければ、100億円超という資金調達は成し得なかったと思います。

 

 

■調達した資金で更なる事業拡大を目指す!

 

ー今回の資金調達の使い道は?

(杉崎)シリーズBで新たに調達した資金は、主に小型SAR衛星の開発・製造・打上・運用、量産施設の準備、および衛星データソリューションの開発とグローバル展開等に充て、更なる事業拡大を目指します。

 

(志藤)小型SAR衛星コンステレーションを構築し、地球のモニタリング頻度をあげることで、より多くのSARデータ提供が可能となります。それらのデータを有効活用することで、持続可能な未来の実現に繋げていくことがSynspectiveのミッションです。また、Synspectiveが今後も社会により多くの貢献をするためにも、上場に向けて着実にビジネスを前進させていきたいと思います。

 

 

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