地球観測におけるAIや機械学習の活用について考えると、私は地理空間アプリケーションへの技術適用には4つのフェーズがあると考えています。
第1のフェーズは「記述的(Descriptive)」な段階です。これは、画像を見て、物体検出のようにそこに何が映っているかを記述するものです。第2は「診断的(Diagnostic)」な段階で、地理的・時間的なデータの中から観測されたパターンを特定します。第3は「予測的(Predictive)」な段階です。例えば、港湾を分析し、次に何が起こるかを予測するようなケースです。そして第4のフェーズが「処方的(Prescriptive)」な段階であり、ここではAIがどのような行動をとるべきかを人間に提示します。

私たちはまだ、この最終フェーズには程遠い場所にいると言えるでしょう。なぜなら、AIに行動を委ねる前に、まずAIに対する「信頼」を築く必要があるからです。しかし、このフレームワークは、業界が今どこにいて、どこに向かっているのかを整理するのに役立ちます。
業界におけるGeoAIの現在地を理解するには、これまでの歩みを振り返ることが有効です。近年、私たちは光学(EO)およびSARデータからの物体・地物検出を含む画像解釈において、AIの活用に成功してきました。AIは、船舶、航空機、自動車などの物体や、建物の形状、農地の境界、道路などの地物を識別するために使用されています。GeoAIは他のミッションでも成果を上げていますが、より広範な採用には、信頼できるAI/MLモデルの確立が不可欠です。
さらに、業界ではLLM(大規模言語モデル)のような生成AI技術を、自然言語を用いた地理空間ワークフローに取り入れ始めています。ChatGPTやGeminiのような大規模言語モデルは、現時点では位置情報を認識しませんが、Vision Language Models: VLM(視覚言語モデル)やGeoAIの最近の進歩により、このパラダイムは急速に変化しています。また、GeoAIは「エージェント型AI(Agentic AI)」モデルも採用しつつあります。これは1つまたは複数のタスクに焦点を当て、そのタスクに秀でるよう設計された自己学習型のモデルです。
Google、IBM、OpenAI、NASA、ESAなどの組織による「Earth Foundation Models(地球基盤モデル)」は、現在、地球規模の分析のために多種多様なデータを統合しています。基盤モデルが採用している、データをAIが扱いやすい形式に効率よく変換するアプローチは、地球規模の分析をスムーズにするだけでなく、現地の地上検証データを取り込んでモデル精度を向上させることができるエッジデプロイメント展開も可能にします。地球基盤モデルは、スペクトル、空間、時間の各次元で異なる解像度を持つ地球上のあらゆる種類のデータを活用できます。これらの基盤モデルにより、LandsatやSentinelなどの衛星によって収集された20~40年にわたる歴史的文脈とともに、世界中のあらゆる地理的場所で何が起きているかを理解できるようになるでしょう。
一方で、地球上のあらゆる場所は、光学や合成開口レーダー(SAR)センサー、さらには宇宙、空、陸、海のその他の多様なセンサーによってすでに画像化されています。こうしたデータの融合は、AI/ML分析のために構造化されているSARデータにとって特に有利です。SARの周波数、波長、振幅、位相、偏波といったデータは、人間の視覚に頼ることなく、機械によって解釈することが可能です。24時間365日、全天候型で、複数のコンステレーションを通じて画像を収集できるSARの能力は、地球の継続的なモニタリングを可能にします。
現状とこれからの道のり
現在、私たちはまだAIの価値提案における「記述的」フェーズに留まり、画像内で何が起きているかを理解している段階です。しかし、時系列データを活用することで、私たちは今、物理的および人の生活のパターンを理解し、データ内で観測された異常をAIモデルで特定・診断する「診断的」フェーズに入りつつあります。人間は習慣の生き物であり、生活のパターンを理解することで、「予測的」フェーズへの一歩を踏み出すことができます。例えば、港湾施設では通常、船舶の活動に一定のパターンが見られます。そのパターンが逸脱した場合、AIはその異常を調査対象としてフラグを立て、OSINT(オープンソース・インテリジェンス)などの他のデータソースを用いて、何が変わったのか、なぜ変わったのかを特定するためにデータを精査することができます。
残る課題は、一貫した分析のためにこれらすべてのデータセットを統合することです。データは、形状、品質レベル、速度、量がそれぞれ異なります。残念ながらこの統合の課題を業界としてまだ完全には解決できていません。「予測的」フェーズは手の届く位置にありますが、今日現在はまだそこには至っていないのが実情です。
将来的には、地球基盤モデルがグローバル規模で観測するベースラインを提供し、特定の場所や地域に基づく分析は、衛星上や現場で直接稼働する、より小型のモデルへと重心が移っていくと私は見ています。これらの特化されたエージェント型AIモデルは、基盤的な知識を活用しつつ、特定のユースケースに合わせてそれを洗練させることができます。マルチソースデータが標準となり、AIモデルの大規模な検証が行われることで、私たちは予測的、そして最終的には処方的なアクションを実行するAIを信頼するようになるでしょう。
AIドリブンな世界におけるSARの独自性
SARデータは本質的に3Dおよび4Dのデータです。24時間365日の全天候型能力に加え、3Dデータを取得できることはSARの差別化要因です。異なる時間に収集された2枚以上の画像を使用するSARの干渉解析は、地域ごとの正確な標高変化の計算を可能にします。AIドリブンな世界において、SAR衛星コンステレーションは、地球の継続的かつ即時観測において独自の優位性を提供し、災害対応からインフラモニタリング監視、海洋モニタリング監視、物体の管理・監視などに至るまで、様々なミッションを支援するためのタイムリーで信頼性の高い情報を提供します。