小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用からSARデータの販売、解析ソリューションの提供を行う株式会社Synspective(本社:東京都江東区、代表取締役CEO:新井元行)は、自社が提供するSARデータの、ORT(Orthorectified Products)*1処理ラインにおいて、CEOS(地球観測衛星委員会)*2が定める国際規格「CEOS-ARD」*3の「NRB(Normalised Radar Backscatter)規格」*4への準拠認定を、世界の民間SAR衛星事業者として初めて取得したことをお知らせいたします。

本認定は、JAXA、ESA(欧州宇宙機関)、NASA(米国航空宇宙局)など世界60以上の主要宇宙機関が加盟する国際調整機関「CEOS」による厳格な外部評価を経て証明されたものです。

今回の準拠により、当社のデータは「専門的な前処理を行わなくても、すぐに高度な分析に活用できる高精度なデータ(Analysis Ready Data)」として世界水準の信頼性を認められたことになります。

通常、SAR衛星のデータを画像化し利活用するためには、画像の歪みを補正したり、位置を合わせたりするための複雑な前処理が必要であり、これが利用時の大きな障壁となっていました。今回の認定により、ユーザーは専門的なノウハウや多大な時間を要する前処理を行うことなく、直接自社の地理情報システム(GIS*5等)にデータを取り込み、より高度な意思決定に活用できるようになります。

「CEOS-ARD」国際規格に認証された当社SARデータの特長と顧客メリット

1. 高度な地形歪み補正(Radiometric Terrain Correction)
1-1.技術の概要
従来の一般的なSAR衛星画像は、山岳地帯などで電波の照射角度による画像の歪みが発生し、地物の位置がズレて写る特徴があります。本補正技術は、デジタル標高データを用いて地表の起伏による歪みを自動的に排除し、撮像した対象物を、実際の正しい位置情報(緯度・経度)へ、きわめて正確にマッピングします。

1-2.顧客メリット
国土の約70%を山地が占める日本をはじめ、起伏の激しいグローバルな山岳エリアにおいて、インフラの監視や災害時の土砂崩れなどの状況変化をより正確に把握・評価することに寄与します。

2. 固定グリッドスタッキング(Fixed-Grid Stacking)
2-1.技術の概要
異なる時期に撮影された画像であっても、あらかじめ世界共通の「同じ区画(固定グリッド)」かつ「同じ解像度(ピクセル間隔)」に位置が固定された状態でデータが生成されます。

2-2.顧客メリット
従来、異なる日時のデータを重ねて変化を追う(時系列解析)ためには、ユーザー側で数時間〜数日かけて画像をミリ単位で微調整する「位置合わせ(リグリッドやリサンプリング)」などの多くの作業が必要でした。今回の技術により、複数のデータをトランプのカードを重ねるように素早い比較が可能になり、大規模な洪水や地盤変動などの時系列変化の解析効率(速度)が向上します。

さらに解析をスムーズにする、クラウドネイティブなデータ配信

当社データは「Cloud-Optimized GeoTIFF(COG)」と呼ばれるクラウド対応の最適化フォーマットで提供されます。ギガバイト単位の巨大なデータファイルであっても、手元のパソコンにすべてダウンロードするのを待つ必要はありません。「QGIS」や「ArcGIS」などの地図ソフトウェア上で、見たい場所だけをピンポイントで高速ストリーミング表示できるため、パソコンでの解析作業が圧倒的に速く、効率化されます。

グローバルな意思決定の迅速化を目指して

SAR衛星で取得される地上のデータは、未加工の状態です。これを画像化・解析などのプロセスに進めるためには、前処理が必要となり、高度な技術と時間が必要でした。しかし、この『NRB規格』に準拠したデータは、「Analysis Ready(即座に解析可能)」な高付加価値データです。お客様は、届いたデータをシステムに流し込むことで、地表の変化(災害や地盤沈下など)の比較やAI分析を行うことが可能になります。

Synspectiveは、今後も技術革新を続け、「次世代の人々が地球を理解し、レジリエントな未来を実現するための新たなインフラをつくる」ことを目指し、持続可能な未来の実現に貢献を続けてまいります。

各用語について
*1:Orthorectified Products(ORT)とは
地表の歪みを補正して地図と正確に重ね合わせられるようにし、地形起伏による位置のズレを高度に除去した製品(オルソ画像)を指します。

*2:CEOS(地球観測衛星委員会)とは
各国の宇宙関連機関が集まり、データフォーマットやカタログ相互運用等の地球観測に関する標準、国際的な情報インフラ、将来的な開発や協力に関わる構想を議論している委員会。

*3:CEOS-ARD(Analysis Ready Data)とは
専門的な前処理を行わなくても、すぐに高度な分析に活用できるよう、ユーザーの作業負荷を最小限に抑えて即座に解析にかけられる形式で処理された高精度な衛星データのことです。

*4:NRB(Normalised Radar Backscatter)規格とは
地表の傾きによる『電波の明るさのムラ』を取り除き、地表本来の姿(硬さ、水分、建物があるかなど)だけを純粋に比較できるようにルールを統一したデータ規格。

*5:GIS(地理情報システム)とは
位置情報(緯度・経度など)を持つデータとデジタル地図を紐づけ、可視化・分析するシステムです。地図上にさまざまな情報を重ね合わせて(レイヤー化)分析することで、事象の相関関係や傾向を把握します。