2019年(令和元年)10月6日にマリアナ諸島の東海上で発生し、12日に日本に上陸した大型台風です。非常に大きな勢力を保ちながら日本列島を襲い、広範囲で大雨、暴風、高波、高潮に見舞われました。最低気圧は915hPa、最高風速は162mphで、国内の被害総額は1兆8600億円に上ったと言われます。この台風の影響で300件以上の地滑りが発生し、70以上の河川で堤防が決壊しました。
この台風19号による阿武隈川の洪水の被害状況を当社Flood Damage Assessmentを用いて解析しました。
Flood Damage Assessment(FDA)による阿武隈川の氾濫の解析
Synspectiveでは、2019年(令和元年)10月12日午後11時42分(UTC)に観測されたSentinel-1 SAR衛星データを用いて、東北地方で特に被害が大きかった阿武隈川周辺(福島県郡山市周辺)の洪水状況を解析しました。
解析結果
解析の結果、撮像時の浸水面積は25.72㎢で、そのうちの半分以上が浸水深1.8m以上であったことが推測されます。また、浸水した道路や建物の半分以上が浸水深1.8mであったとすると、1,800km以上の道路と6,800棟以上の建物が被災したこととなります。阿武隈川周辺の建造物は浸水の影響を大きく受けていたであろうことがわかります。
データ
ソリューションの特徴
- 対象地域でどの道路・建物が浸水しているか3Dで可視化・定量把握が可能
- 直感的なユーザーインターフェース
- PDFレポートでの出力
他の観測データとの相違点
- 道路や建物の浸水情報による広範囲の観測
- 人による確認や解析が不要な自動解析
- 河川の水位計などの地上観測データに加え、浸水範囲及び浸水深度情報も把握可能
まとめ
災害発生時には正確な情報に基づき、被害状況に応じた迅速な対応が必要となります。
Synspectiveは、独自の小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行っており、すでに運用を開始した初号機を含め、2020年代後半までに30機の衛星コンステレーション構築を目指します。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域で災害が発生しても、2時間以内に衛星が到達し観測することが可能となります。
従来の光学衛星や航空機・ドローンによる観測方法とは異なり、SAR衛星は全天候型の地上観測が可能なため、より広い範囲での浸水被害の有無を迅速に把握することが可能です。
さらに、AI(機械学習)技術などの最先端の解析手法を活用することで、上記のように道路や建物などの施設への影響範囲を把握することができます。
将来的には、小型SAR衛星コンステレーションから得られるデータをFlood Damage Assessmentに組み込むことで、浸水被害をより迅速に把握することが可能となります。これにより、公的機関においては浸水地域への救助や支援、人員配置の優先順位付けに、保険会社や自社設備を持つ企業では、浸水被害を迅速に把握し、意思決定にデータを活用することができます。