Synspectiveのシンガポールオフィスは、アジア太平洋(APAC)地域における活動の極めて重要なゲートウェイ(玄関口)としての役割を担っています。販売戦略からテクニカルサポート、そして災害対応に至るまで、同チームはSARデータを、各地域のニーズに即したソリューションへと「翻訳」する役割を果たしています。

今回は、リージョナル・セールス・エグゼクティブの Alvin Hoh Guan Huahと、セールスエンジニアリング・マネージャーの Elizabeth Wing-See Wong に、彼らの役割や東南アジアにおけるSAR技術のインパクト、そしてグローバルな成功に不可欠な「文化的翻訳」について話を聞きました。

APACにおける戦略推進とエコシステムの構築

—まず、シンガポールオフィスにおけるお二人の役割について教えてください。

Alvin: 私は、オセアニア(豪州、NZ、太平洋諸島)、マレーシア、ベトナム、そして韓国の商用・政府セクターを含む広大なエリアで、販売およびマーケティング戦略をリードしています。前職のMaxarなど光学衛星業界での経験を活かし、ワークショップや国際会議を通じて、複雑な衛星技術と災害対応やインフラ整備などの課題解決を結びつける「エコシステムの構築」に注力しています。

Elizabeth: 私は、プリセールスおよびポストセールスにおけるテクニカルサポートを行うエンジニアチームを率いています。Synspectiveに参画して約4年になりますが、以前はシンガポールの研究機関(CRISP)で光学データの研究をしていました。私たちのチームはエンジニアとして営業チームに同行し、技術的質問への回答やプロジェクト提案、クライアント向けの技術仕様の定義などを行っています。

日本と世界をつなぐ「翻訳者」としてのロール

—日本企業であるSynspectiveがグローバル展開を加速させる中で、シンガポールチームはどのような役割を果たしているのでしょうか。

Alvin: 日本の技術環境は独自性が高く、それを世界で成功させるためには、日本のハイエンドなエンジニアリングを、国際基準や現地のニーズに響くソリューションに変換する必要があります。現地の言語、政治、経済に関する知見を東京の本社にフィードバックし、すべてのプロジェクトにおいて円滑なコミュニケーションと最適な合意形成を図っています。

Elizabeth: また、各国でのパートナー企業のマネジメントも重要な業務です。私たちがカバーする20カ国(インド、東南アジア、オセアニア、中央アジア、トルコなど)には、それぞれ固有の要件があります。現地のパートナーはそれらを理解するための不可欠な存在であり、彼らから得た多様なニーズを本社へ共有しています。

SAR技術が東南アジアの環境課題を打破する

東南アジア地域において、なぜSAR衛星がそれほど重要なのでしょうか。

Alvin: 東南アジアのような地域では、厚い雲や激しい降雨が、従来の光学衛星にとって常に大きな障害となります。SARはマイクロ波を使って雲や煙、さらには夜間の暗闇さえも透過して観測できるため、24時間365日のモニタリングを可能にする「ゲームチェンジャー」なのです。

Elizabeth: この地域では、年間の80〜90%の時間帯が雲に覆われていると言われています。つまり、光学衛星の画像の大部分は雲に遮られて使い物にならないということです。他のセンサーが機能しない時でも、SARは信頼できる「宇宙の目」として機能します。

災害対応で見せたSARの真価

Synspectiveの技術が危機の際に大きな違いを生んだ具体例はありますか?

Alvin: 昨年、ベトナム政府が行った激しい雷雨と洪水への対応支援は、私にとって象徴的な瞬間でした。災害対応では「スピード」がすべてです。多くの公的衛星の再訪頻度が数日単位であるのに対し、当社の小型SAR衛星コンステレーションは1日に複数回の観測が可能です。パートナーのVegacosmos社と協力し、洪水監視のための緊急観測を実施し解析結果の提供ができました。災害発生時、実用的な解析結果をニア-リアルタイムで提供することは、地域のレジリエンスを支える力になります。

Elizabeth: タイでも、パートナーであるGISTDA(タイ宇宙技術情報開発機構)と共に大きな成果を上げました。当社のSAR画像が現地の全国ニュース番組で取り上げられ、洪水の浸水範囲を明確に示したのです。これにより、タイ国内でSARが洪水監視に有効であるという認識が広まり、ブランドの認知度も飛躍的に向上しました。

成長に伴う課題と「知識のギャップ」の解消

新しい市場にこの技術を導入する際、どのような障壁がありますか。

Elizabeth: 大きな課題は、東南アジアの多くのクライアントやパートナーが、SARに関する深い知識をまだ持っていないことです。メリットは理解していても、光学画像に慣れているため、現在のワークフローにどう組み込むべきかで苦労されます。そのため、私たちは頻繁に教育ワークショップやオンボーディング・セッションを開催し、知識の底上げを図っています。

Alvin: 内部的には、ビジネススピードの差もあります。日本は多段階のワークフローを重んじる傾向がありますが、ベトナムやオーストラリア、韓国などの市場では即時のレスポンスが求められます。私たちは本社と常に連携し、グローバルなスピード感にマッチするよう運用システムの合理化に取り組んでいます。

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未来のタレントへのアドバイス

Synspectiveのような急成長中のディープテック企業を目指す人へ、アドバイスをお願いします。

Alvin: 宇宙ビジネスは確かに複雑な面もありますが、恐れる必要はありません。大切なのは「情熱」を持って取り組むことです。私たちは単に衛星を打ち上げているのではなく、データによって地球のためのより良い意思決定ができる世界を創っているのです。

Elizabeth: 必ずしも宇宙業界のバックグラウンドは必要ありません。業務を通じて学ぶことができます。地球観測のコミュニティは非常にフレンドリーで結束が固いです。大きな情熱を持ち、世界規模のインパクトを与えるやりがいのある旅に出る準備ができているなら、ここは最高の職場です。