※動画は、日本語字幕が用意されております。字幕をONでご利用下さい。
私たちの事業内容や技術を解説しているSynspective Webinar Report シリーズ。第3回となる今回は、SAR衛星データを用いて広域の沈下傾向や地滑りのリスクを把握できるソリューション「地形変動モニタリング(Land Displacement Monitoring、以下LDM)」をご紹介します。
■「空の目」が地表の変化をつぶさに捉える
LDMは、人工衛星から得られるデータから地盤変動リスクを把握し、建設や工事プロジェクト、インフラ管理や資源開発など様々な領域に活用できるクラウドソリューションです。
プロダクトのコアとなっているのは「SAR衛星」による計測です。これは能動的にマイクロ波を地表へ射出し、地上の様子を観測する人工衛星です。
SAR衛星が能動的に照射するマイクロ波は雲を透過する性質を持ち、また夜間でも反射を得ることができるため、天候や昼夜に関係なく地表の様子を観測できます。
観測できる範囲は約1800km2と大都市全体を一度に把握でき、定期的に観測することで地域の水平・垂直方向の変化をミリ単位で計測できます。そのため、都市開発の進捗確認から洪水や地滑り等の被災状況把握など、様々な用途に活用できます。
■LDMが可能にする「ミリ単位の地形変動モニタリング」
前段でご紹介したように、SAR衛星は天候や昼夜に関係なく、広域の地盤変動をミリ単位で観測できます。この特性を活かしてSynspectiveが開発したのが、「地形変動モニタリング(Land Displacement Monitoring)」です。
2020年9月にリリースしたこのサービスでは、任意の対象地域についてダッシュボード上に時系列の変動量が表され、地図上では各地点の変動量を確認できます。さらに、時系列の変動量をグラフ表示や閾値に応じて分類する機能もあり、任意の形式でデータ出力が可能です。
これらのデータを活用することで地滑りや地盤沈下、地上構造物の歪みなどの予兆を掴み、早期に対策を講じることができます。
詳しくは動画をご覧ください。
具体的にはどのようなデータが得られるのか。米国ユタ州にあるビンガムキャニオン鉱山のデータをもとに解説します。
同鉱山は1906年に操業され、世界最大級の露天掘り鉱山として大量の銅や金を算出しています。しかし、2013年4月に鉱山北東の壁が崩落し、2021年5月にも南壁が崩落しており、被害総額は約10億ドルと推定されています。
この鉱山のデータをLDMで解析すると、複数斜面における崩落のリスクがはっきりと出ていました。
画像の表面に見える白やオレンジ、赤色の点はマイナスの変動量を表し、赤に近づくほど大きな変動を表します。2019年7月からの衛星データを解析すると、崩落が起きた2021年5月にかけて鉱山の南壁に変動が見られ、徐々に斜面が移動している様子が分かります。
同様のモニタリングは人工物にも対応できます。こちらは2019年に決壊を起こしたブラジル東部のブルマジーニョ尾鉱ダムの解析データでは、鉱山と同様に「安定している斜面」と「変動の可能性がある斜面」を把握することができました。
従来、変動の予兆を掴むためには現地に観測機器を多数設置する必要があり、多大な労力と費用がかかっていました。しかし、LDMを用いれば広域の変化をいち早く察知して、ピンポイントで対策できるため、効率的に安全対策をすることができます。
LDMはSAR衛星データを用いるため、遠隔からモニタリングが可能であり、海外の関心領域はもちろん、災害現場など人の移動が難しい地域の調査もできます。さらに、観測地域に大きな変動が起きた場合はアラートを発出することができ、現地スタッフと素早い連携が可能です。
鉱山やダムの事故は一度発生してしまうと大きな被害が生じる傾向があります。紹介したビンガムキャニオン鉱山やブルマジーニョ尾鉱ダムのケースでは被害総額が数十億ドルにふくらみ、損害賠償請求など副次的な被害も発生しました。
SynspectiveのLDMは大きな被害を未然に防ぐソリューションとして活用が期待できます。
■衛星データを通して、企業や人のニーズに応えていく
Synspectiveは今回ご紹介したLDMのほかにも、SAR衛星データを用いたソリューションを多数ご提供しております。
自社衛星StriXの画像販売をはじめ、衛星画像から風水害による被害を把握できる「浸水被害モニタリング(FDA)」やカスタマイズソリューションもご提供しています。ハード・ソフト両面の開発力を通してクライアントのニーズに応えています。
私たちのミッションは「新たなデータとテクノロジーにより人々の可能性を拡げ、着実に『進歩・学習する世界』を実現すること」です。衛星データは人々に新たな視点を与え、ビジネスや生活を次のレベルに引き上げてくれる可能性を持っています。
ウェビナーレポートは今後も更新を続けていく予定です。Synspectiveの事業や技術について詳しく解説を行いますので、引き続きご期待下さい!
※本記事は2021年9月15日に開催したウェビナー”衛星リモートセンシング技術を活用した採掘現場における地盤変形モニタリング”をもとに再構成したものです。
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