報道関係者各位

2021年7月13日

株式会社Synspective

国立研究開発法人防災科学技術研究所

 

災害対策に小型SAR衛星コンステレーションを融合へ

Synspectiveと防災科研、共同実証を開始

 

 

株式会社Synspective(本社:東京都江東区、代表取締役CEO:新井元行)と、国立研究開発法人防災科学技術研究所(茨城県つくば市、理事長:林春男)は、小型SAR(合成開口レーダ)衛星の災害対応への活用に向けた共同実証を開始しました。

 

1. 背景

雲を透過し昼夜を問わず地球観測が可能なSAR衛星は、発災直後に被災エリアを広域に把握する手段として活用されてきました。これまで、SAR衛星は多くの電力を使うこと等から小型化が難しいとされていましたが、近年、技術課題であった小型化に成功した次世代型SAR衛星が出現し、衛星コンステレーション*1を構築することで、災害対応において新たな活用の進展が期待されています。

株式会社Synspective(以下「Synspective」という。)は、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)*2の成果を活用した小型SAR衛星開発の独自技術を有し、すでに運用を開始した初号機を含め、2020年代後半までに30機のコンステレーション構築を目指しています。更に、小型SAR衛星による画像データの提供だけでなく、得られる画像データにAI(機械学習)の高次処理を加え、新しい衛星データ・ソリューションの提供を行っています。

防災科学技術研究所(以下「防災科研」という。)は、あらゆる自然災害に対する、予測力、予防力、対応力、回復力の総合的な向上を図り、災害に強い社会の実現に向けた研究開発を行っています。特に対応力については、発災直後の迅速な被災状況把握の実現を目指し、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)*3において、数多くの衛星データ等を即時に共有し、被害状況を解析および予測する統合的なシステムの開発を行っています。

そこで今般、防災科研が有する対応力向上に関する防災情報の統合解析技術と、Synspectiveが有する革新的な衛星データ・ソリューション技術の融合を目指し、災害対策への小型SAR衛星の活用に向けた共同実証を開始します。

将来的には、小型SAR衛星コンステレーションを含む数多くの衛星を活用して、地震・火山や風水害などの各種災害に対する発災直後の迅速な被災状況把握を実現し、発災前後のデータ比較などの付加価値の高い情報プロダクツの生成を行うことで、我が国のレジリエンス強化に貢献できるよう、研究開発を進めてまいります。

 

2. 研究概要

(1)小型SAR衛星を災害時に活用するためのフローの確立

発災直後の被災状況把握に小型SAR衛星を効果的に活用するためのフローを確立します。現在、SIPにおいて、予測情報および観測情報と、衛星軌道およびセンサ情報を用いて、発災直後に被災エリアを的確に観測するための戦略検討を支援する技術を開発しており、本共同実証では、新たに小型SAR衛星を加えると共に、災害時の観測戦略の検討から緊急観測の依頼、衛星データ提供までの一連のフローの確立を目指します。

(2)小型SAR衛星を活用した情報プロダクツ生成に向けた検討

小型SAR衛星に加え、他の衛星や各種地理空間情報を組み合わせることで、発災後の直接的な被害データや、地震・火山による地盤・地殻変動等の発災前後のデータ比較など、災害対応に資する情報プロダクツの生成に向けた検討を行います。

具体的には、災害対応者等からのニーズを把握しながら、効果的なデータ統合手法、解析手法、可視化手法の検討を進めます。

*1 衛星コンステレーションとは、多数の衛星を互いに連携・協調させた運用を行う状態のこと。「宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項(令和3年6月29日宇宙開発戦略本部決定)」において、我が国独自の小型衛星コンステレーションの構築に向けて戦略的に取り組むこととされている。
<参考>宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項(令和3年6月29日 宇宙開発戦略本部決定)https://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/kaitei_fy03/juten_all.pdf

*2 革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」とは、実現すれば産業や社会のあり方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進することを目的として創設された内閣府主導のプログラム。

*3 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)とは、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。

 

 

■Synspectiveにおける関連する取組

昨年より、広域にわたる土地の沈降や地すべりのリスクを把握したり、人が入っていくのが難しい地域や、移動制約がある中でも遠隔地・現場調査が必要な場合などに活用できる「Land Displacement Monitoring(地盤変動モニタリング)」サービスや、災害対応のための浸水被害(浸水域、浸水深、被害道路、被害建物)を評価する「Flood Damage Assessment(浸水被害モニタリング)」サービスを提供しています。
昨年12月に打ち上げた小型SAR衛星 初号機StriX-α(ストリクス-アルファ)の本格運用を開始しており、今後は、小型化のメリットを生かして衛星機数を30機まで増強することを計画しています。自社の小型SAR衛星コンステレーションと衛星データ・ソリューションから、日本全域で発生する災害に関する情報を、発災から即時に、かつ高頻度で取得することが可能になります。

 

■防災科研における関連する取組

災害時に必要な情報を共有することで、効果的な災害対応を行うための基盤的防災情報流通ネットワーク「SIP4D」の研究開発に取り組んでいます。また、内閣府と創設した災害時情報集約支援チーム(ISUT)における活動を通じて、指定公共機関や災害対応現場(自治体等)と連携しながら研究開発に取り組んでいます。

特に、将来の発生が懸念される南海トラフ地震のような大規模かつ広域な自然災害では、広範囲に影響が及ぶため、災害の全体像の把握が困難となります。被災状況の全体像を早期に把握し、現地への迅速かつ的確な支援を行うために衛星観測の重要性が増してきています。

そこで、現在、SIPの一環として、発災直後における広域な被災状況把握を実現するため、「衛星データ即時一元化・共有システム(略称、ワンストップシステム)」の研究開発を行っています。発災直後における的確な被災エリアの観測が依頼でき、観測された衛星データを一元化でき、さらに衛星データの解析結果が参照可能な、災害時の衛星活用の「ワンストップサービス化」実現に向けた情報システムの開発を省庁連携で実施しています。

 

■Synspectiveについて

Synspective(シンスペクティブ)は、データに基づき、着実に進歩する世界の実現を目指し、衛星による観測データを活用したワンストップソリューション事業を行う2018年2月に設立した会社です。内閣府「ImPACT」プロジェクトの成果を応用した独自の小型SAR衛星により高頻度観測を可能にする衛星群を構築し、その衛星から得られるデータの販売、および、それらを利用した政府・企業向けのソリューションを提供します。

 

■防災科研について

防災科研は、1963年に国立防災科学技術センターとして発足し、防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等の業務を総合的に実施している文部科学省所管の研究所です。「生きる、を支える科学技術」というアイデンティティを掲げ、防災科学技術を発展させることで人々の命と暮らしを支えるために、あらゆる自然災害を対象とした、予測・予防・対応・回復のすべての段階で総合的な研究を推進し、災害に強い社会の実現を目指しています。

 

 

【本件に関するお問合せ先】

株式会社Synspective  PR担当 熊崎 080-7496-8006 ・ 藤川080-9664-3126

 press@synspective.com

 

【防災科研へのお問い合わせ先】

国立研究開発法人防災科学技術研究所

企画部広報・ブランディング推進課

川﨑、江東

電 話:029-863-7798

FAX:029-863-7699