小型SAR衛星の開発・運用と衛星データの販売、データ解析によるソリューションの提供を行う株式会社Synspective(本社:東京都江東区、代表取締役CEO:新井元行、以下「Synspective」)は、天然資源の監視、環境保護、防災、社会経済開発、安全保障と防衛のためのリモートセンシング活動を執り行うベトナム国天然資源環境省国家リモートセンシング局および、包括的な統合 IT、電気通信、ネットワーキング ソリューションを提供する富士通株式会社のベトナム現地法人である富士通ベトナム株式会社(本社:ベトナム・ハノイ、社長 Dan Tuan Anh)とベトナム国の自然資源及び環境の監視、自然災害防止、経済発展における衛星リモートセンシング技術の応用分野における協力を目的とした覚書を締結したことをご報告いたします。

 

災害対策、経済発展にSARデータを積極活用

 ベトナム国はアジア太平洋地域でも最も災害の危険度の高い国の一つであり、毎年台風や熱帯低気圧による強風、洪水氾濫や高潮、土砂災害が頻発し、大きな被害を及ぼしています。

 同国では、これら自然災害の課題をリモートセンシング*1を用いた解決を目指し、画像データ収集システムやデータベース、アプリケーション開発など、国家をあげてリモートセンシング技術への投資に重点を置き、国際協力活動を強化していくことを推進しています*2。また、2030年に向け、これら宇宙科学技術の開発から、国防、安全保障、天然資源、環境保全などに活用しつつ、社会経済の発展*3を目指しています。

*1:リモートセンシングとは:遠隔地で発生している現象や物体を物理的に接触せずに計測・解析する技術。地表の特性を反映した光や電波などをセンサーで検出し、そのデータを元に地表面の情報を抽出します。

*2:2040年を見据えた2030年までの国家遠隔探査開発戦略の承認 149/QD-TTg

*3:2030年に向けた宇宙科学技術の開発及び導入に係る戦略を公布する首相決定 No.169/QD-TTg

 

宇宙技術を活用した日本・ASEAN地域におけるモデルケースに

 本MOUの締結は、2023年9⽉インドネシア・ジャカルタにおいて開催されたAPRSAF-29の宇宙産業政策会合を経て、東アジア・アセアン経済研究センター(Economic Research Institute for ASEAN and East Asia、以下:ERIA)*4による支援の元、実現しました。ERIAでは、宇宙技術を活用した日本・ASEAN双方の社会経済の発展を目指し、ASEAN地域における拠点整備やビジネス化までのスキーム作りについての政策研究を行っています。

 本MOUにおける施策は、ASEANにおける日本の衛星データや衛星データプラットフォームを活用した新たなエコシステム構築を図るモデルケースの一つとなります。

*4 ERIAについて:東アジアの経済統合に関わる政策研究および政策提言活動を実施することを目的として東アジア16カ国(ASEAN加盟10カ国、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)の首脳の合意に基づき設立された国際機関

 

知識と経験の共有からベトナム国の社会経済発展を目指して

 本MOUは、2024年から2028年までを契約期間とし、ベトナム国の天然資源及び環境のモニタリング、自然災害防止において、Synspectiveが保有する小型SAR衛星コンステレーションによるSARデータ及び、解析ソリューションと富士通ベトナムが保有する包括的な統合ITソリューションそれぞれの応用と知識及び経験の交換を実施し、同国の社会経済発展と社会課題解決を目指します。

 具体的な施策としては、Synspectiveの提供する地盤変動モニタリングソリューション(以下LDM)による地盤変動解析およびモニタリングの実施や、SAR衛星データを活用した他地域への応用と要求事項の開発、天然資源問題の原因と影響に関する調査やデータ収集、SAR衛星コンステレーションを用いた同国独自のモニタリング体制の検討などを行う予定です。

 

実証例

 ベトナムでは、地下水の汲み上げやその他の原因による地盤沈下や地滑りに見舞われており、潜在的な洪水リスクがあります。特に中部高原では、壁や地面に多くの亀裂が入り、広がっているように見え、他の多くの場所でも連続して発生しています。地面の亀裂は地滑りの最初の兆候の一つであり、長引く大雨によって土壌が飽和状態になり、強度が低下することが原因である可能性が高いとされています。

 

画像出典:右図) https://vietnamnews.vn/environment/548889/hcm-city-mekong-delta-face-serious-land-subsidence.html
左図) https://vnexpress.net/bat-an-voi-sat-lo-sut-lun-dat-o-tay-nguyen-4637340.html

 

 衛星データを用いることで定期的かつ広範囲でのモニタリングが可能になり、自然災害の兆候である地盤変動を捉えることができれば、その後の対策を検討し実施することが可能になります。このような社会課題に対して、Synspectiveが提供する地盤変動モニタリングソリューションを用い、その簡易性、効率性、有効性を検証します。

 

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*SynspectiveのLDM操作画面イメージ:LDMサービスについてはこちらから

 

各社からのコメント

ベトナム国天然資源環境省国家リモートセンシング局

General Director Tran Tuan Ngoc

「リモートセンシング分野における当事者間の協力が良好で持続可能な発展のステップとなり、ベトナムと日本の包括的な戦略的パートナーシップの強化に貢献することを期待している。」

 

株式会社 富士通ベトナム

副社長 橋本純     

「富士通では、テクノロジーの力を活用して、世界で最も差し迫った課題の解決に取り組んでいます。Synspective様及びベトナム天然資源環境省国家リモートセンシング局様とのパートナーシップは、環境保護、自然災害の軽減、そして社会経済発展の促進のための、当社のコミットメントを表しています。皆様と共に、より安全で豊かな未来を思い描くだけでなく、我々はその構築を支援していきます。」

 

株式会社Synspective

執行役員 ビジネス部ゼネラルマネージャー 小田原 孝行

「3者間での長期的・包括的なパートナーシップの下、SynspectiveのSARインテリジェンスでベトナム国における様々な社会課題解決に貢献して行きます。」