概要
「広域地表面の継続的なモニタリング」が可能となるSARデータと機械学習手法による解析を用いて、東京湾の船舶動向を分析しました。
想定活用場面
これまで、船舶検知は船舶自動識別装置(AIS:Automatic Identification System)情報や定点カメラ・センサによるAI技術、画像認識技術などで実施されていました。
SynspectiveのSAR衛星による物体検出技術が加わることにより、さらに効率的に広範囲な地域を、長期間に低間隔でモニタリングすることが可能です。具体的には港湾の出入りする船舶量の監視、混雑率の把握、密輸・密航・密漁などの監視が可能です。
またCOVID-19(新型コロナウイルス)によるパンデミック以来、上海やロサンゼルスなどの大きな港での滞留時間が何倍にも長くなり、世界中のサプライチェーンが混乱しました。定期的にコンテナ輸送状況を観測し、関連要素を把握することが、港湾サプライチェーンの混乱を解消する手掛かりとなります。衛星によるリモートセンシングと地理空間データを使用して、港湾における船舶、コンテナ、トラックなどの関連状況を分析し、その状況を定量化することで、混乱の原因把握や将来の渋滞などを推定することが可能となります。さらにSAR衛星による物体検出技術を利用することで、船舶の検知のみならず、駐車場の混雑度合や滞留車両、盗難防止等、他の場面でも活用できます。
解析手法
今回の解析ではSAR画像を使用し、機械学習を用いた物体検知技術にて船舶を自動検知します。
SAR画像の解析には衛星からの電波の散乱強度(※)のデータを活用しています。散乱強度とコヒーレンス値それぞれのデータより船舶の動きを解析しています。自動検知により時間短縮と容易な数値化を実現し、広範囲な範囲のモニタリングが可能となります。加えて船舶の動きをパターン化し、適切なロジックを設定できれば、解析を自動化することも可能です。
(※)散乱強度
SARセンサから照射されたマイクロ波が地表などの境界線で散乱すること。散乱強度は境界面の粗さの影響を受ける。
解析結果
以下の画像が衛星から撮像したSAR画像です。画像のうち緑色の丸で囲まれたものが船舶で、機械学習により識別されました。この解析結果により、東京湾のどの位置にどの程度の船舶がいるかを一目で確認できます。
まとめ
SAR画像と機械学習による解析により、船舶状況を把握することができます。今後は様々なデータソース、地理空間データを組み合わせ、トレンドの変化を検出、混雑シナリオの予測、船舶セクターや経済への影響を評価することができます。
Synspectiveは、小型SAR(合成開口レーダー)衛星「StriX(ストリクス)」の開発・運用を行っており、既に2機の実証機の打ち上げ運用を行なっており、2023年中に合計6機、2026年前後には30機の衛星群(コンステレーション)構築を目指しています。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域でも希望するエリアに2時間以内に衛星が到達し、観測することが可能となります。SAR衛星は全天候型の地上観測が可能なため、より広い範囲を一定の頻度で安定かつ迅速に把握することが可能です。