概要
激甚化する自然災害において、自治体の初動対応を迅速化するためには、広範囲の被害状況をいち早く把握することが不可欠です。
本記事では、佐賀県様の「令和7年度 衛星データの活用可能性実証事業」の一環として、建設コンサルタントの株式会社フジヤマとの共同事業体で実施した、小型SAR衛星「StriX」による発災時の土砂災害・浸水把握の実証成果をご紹介します。悪天候や夜間でも観測できるStriXの緊急撮像と自動解析、そして自治体の防災システムへのセキュアなデータ連携を組み合わせることで、緊急撮像開始(模擬)から2時間以内に被害の第一報を提供するフローを構築しました。従来手法と比べて被害把握までの所要時間を約22時間短縮できる可能性に加え、発災後の水害痕跡調査では従来比50%以上の費用縮減が期待できることを実証しました。
背景
佐賀県が抱える地域課題の1つに、「発災時の土砂災害・浸水把握の迅速化」があります。
従来は、災害発生後に職員が現地へ赴き、目視やドローン等で被害状況を確認していました。しかし、立ち入りが困難なエリアでの安全確保や、県内広域の被害状況を網羅的に把握するまでに多大な時間を要することが課題となっていました。
課題:天候に左右されない網羅的な被害把握とデータ連携のスピード
災害時は悪天候が続くことが多く、光学衛星や航空機では状況把握が困難なケースが少なくありません。さらに、撮影した衛星データをいかに迅速に解析し、自治体の防災システムへシームレスに提供できるかが、実用化に向けた大きな課題でした。とりわけ、LGWAN(総合行政ネットワーク)を前提とした安全なデータ連携環境の構築が、解決すべきポイントの一つとなっていました。
ソリューション:将来の「国内最速レベル」を見据えた緊急撮像と自動解析
Synspectiveは、建設コンサルタントである株式会社フジヤマと共同事業体を組み、悪天候や夜間でも地表を観測できる小型SAR衛星「StriX」を活用し、将来のコンステレーション体制構築後に実現する「国内最速レベルの緊急撮像・データ提供」を見据えた実証を行いました。本実証では、発災時の初動対応を想定し、撮像から自治体への情報提供までの一連のフローを、次の3つの要素で構成しました。。
Synspectiveの小型SAR衛星 “StriX”


- 1. 緊急撮像(StriX):災害の前後にStriXで同一エリアを観測し、悪天候・夜間でも地表の状況を捉えます。本実証では、発災を想定した緊急撮像訓練として撮像オペレーションを実施しました。
- 2. 自動解析による被害箇所の抽出:災害前後の画像を比較し、差分が生じた箇所を土砂災害・浸水の可能性がある領域として自動抽出します。空間的な局所パターンを評価するアルゴリズム(フォーカル統計等)を適用し、面的な被害把握を可能にしました。
- 3. セキュアなデータ連携:解析結果である災害速報図やGISデータを、ファイル共有サービス(LGWAN)を通じて佐賀県へ提供するフローを構築・検証しました。(佐賀県防災管理GISシステムへの掲載支援)
解析結果:被害把握までの所要時間を約22時間短縮、事後調査も従来比50%以上のコスト縮減
実証の結果、以下の通り、自治体の災害対応を大幅に効率化できる成果が確認されました。
表. 従来手法とStriX活用ソリューションの比較

- 1. 圧倒的な即時性:緊急撮像開始(模擬)から2時間以内に、衛星画像と被害の第一報を提供するフローを確認しました。悪天候・夜間でも観測できるStriXの特性により、従来の他衛星手法等と比較して、被害把握までの所要時間を約22時間短縮できる可能性が示されました。
- 2. 安全かつ定量的な被害把握:UAVや現地調査では立ち入りが制限される危険なエリアでも、面的かつ定量的に被害規模を把握できます。
- 3. 事後調査のコスト削減:初動対応にとどまらず、発災後の災害査定に向けた「痕跡調査」の代替・補完としても有効です。従来の痕跡調査と比較して、50%以上の費用縮減が期待できることが示されました。
今後の展望:迅速な初動対応を支える防災DXの推進と衛星コンステレーションの拡充
本実証を通じて、StriXの緊急撮像フローと自動解析ソリューションが、自治体の災害対応における意思決定の迅速化に大きく貢献し、高い実効性を備えていることが確認されました。
今後、Synspectiveの衛星コンステレーション体制が整うことで、時間帯や天候を問わず、真に「国内最速レベルの撮像・データ提供」を定常的に実現できるようになります。LGWANをはじめとするセキュアなシステムとの連携をさらに強化し、よりタイムリーで正確な災害情報の提供を通じて、自治体の防災DXを推進してまいります。