前職は包装機械(パッケージングマシン)の組み立てや現場調整。「ものづくりの現場」を知る人間として、知人の紹介をきっかけに2024年にSynspectiveへ入社。宇宙の知識はゼロからのスタートだった宮田さんは、今では衛星の組み立て・試験を担うAITチームの中核メンバーとして、量産化に向けた製造プロセスの構築にも携わっています。本インタビューでは、AITチームの仕事術についてお伺いしました。

―衛星製造の最前線を担う「AITチーム」の役割について教えてください。

AITとは、Assembly(組立)、Integration(統合)、Test(試験)の略称です。設計図面を現実の「機体」へと落とし込み、宇宙空間で正しく機能することを証明する、衛星開発の最終工程を担うチームです。

現在、Synspectiveは自社衛星の量産化という非常にエキサイティングなフェーズにあります。私たちは単に組み立てるだけでなく、いかに効率的に、かつ高品質に製造を安定させるかという「製造ラインの構築」そのものにも向き合っています。

―具体的な製造工程において、核となるのはどのような作業ですか?

大きく分けて4つのフェーズがあります。

  1. サブ・アセンブリー(コンポーネント組立)
    まずは最小単位のユニットを組み立てます。衛星の心臓部となるような精密機器を一つひとつ丁寧に組み上げます。 
  2. パネル・アセンブリー(パネルへの統合)
    衛星の各面を構成するパネルに、サブ・アセンブリーした機器を取り付けていきます。ここで重要になるのが「ハーネス(配線)」の引き回しです。複雑な配線を限られたスペースに、ストレスなく収める技術が求められます。 
  3. 箱組み(筐体組立て)
    各パネルを組み合わせて、衛星の形にしていきます。この段階で、ようやく皆さんがイメージする「人工衛星」の姿が見えてきます。 
  4. 試験・ハンドリング
    組み上がった衛星が振動や熱に耐えられるか、電気的に正しく動くかを確認する試験をサポートします。試験機材への取り付けや、試験結果に基づく微調整など、打ち上げ直前まで機体に寄り添います。

現在はチーム内で役割分担も進んでおり、例えば一つのチームが試験関係を主導し、別のチームが組み立てを完遂させるといった、連携体制を取っています。

衛星の出荷準備をする様子

―異業種から転職されて、この緻密な作業にどのような印象を持ちましたか?

「1ミリの妥協も許されない」という点に、この仕事の厳しさと面白さが詰まっていると感じます。衛星は一度打ち上げれば修理ができないため、「1ミリ」のズレが致命的な不具合に繋がる可能性があります。

特にハーネスの扱いは非常に繊細です。配線の曲げ方一つで電気信号にノイズが乗ることもあります。ここはマニュアル化が最も難しい部分で、指先の感覚や経験則が頼りになります。また、宇宙専用の接着剤や溶剤(アルコールや特殊な接着剤)を多用するため、化学物質の特性を理解した上での慎重な作業が求められます。

―今、Synspectiveは「量産化」という大きなフェーズにありますね。

はい。これまでは「1機を丁寧に作る」ことが主でしたが、現在は「年産12機」という高い目標を掲げています。

私が2年前に入社した頃はまだ1機しかありませんでしたが、現在は次々と新しい機体がラインに載っています。このスピード感の中で品質を維持するために、属人的な技術を「誰でも再現できるマニュアル」へと落とし込んでいく作業を並行して行っています。
「どうすればもっと早く、正確に組めるか」を日々チームで議論しながら、製造ラインそのものをアップデートしていく。これは、若い会社のAITチームだからこそ味わえる醍醐味だと思います。

若手からベテランまで。様々な業界から集まっています。

―どのような方が、このチームで活躍できるでしょうか。

共通して必要なのは、「現場の違和感に気づき、発信できる力」です。作業中に「いつもとネジの締まり方が違う」「配線に不自然なテンションがかかっている」といった小さな違和感を放置せず、設計や生産技術などの他部署へ即座に共有できる誠実さが重要です。

また、現在は製造プロセスを構築している最中ですので、決まった作業をこなすだけでなく「もっと効率的に組むにはどうすればいいか」を自ら考え、標準化を楽しめる方が向いていると思います。

―最後に、これからAITチームを目指す方へメッセージをお願いします。

AITの仕事は、決してスマートな作業ばかりではありません。無塵衣を着てクリーンルームにこもり、時には高所での作業や、地道なネジ締めが続くこともあります。しかし、自分が最後に手を離した衛星がロケットで打ち上がり、実際に撮像した画像を見たときの感動は、何物にも代えられません。

「宇宙の知識がないから」と躊躇する必要はありません。基本的なものづくりのスキルと、違和感を見逃さない細やかな視点、そして挑戦する心があれば、宇宙への扉は開いています。

Rocket Lab社のニュージランド射場にて。9機目が打ち上がる直前に記念撮影!