概要
2021年12月16日から17日にかけてフィリピン南東部を襲った台風22号(ライ)は、各地で甚大な被害をもたらしました。今年、同国に襲来した台風においては最も勢力が強かったと伝えられています。被害に遭われた皆様には心からお見舞い申し上げるとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
今回の台風22号(ライ)襲来に伴う被害状況について、セブ島と北スリガオ地域を対象にSynspectiveの災害解析チームが解析を実施しました。衛星観測データは、台風襲来後の12月20日から21日にかけて撮像されたもの、並びに襲来前の11月下旬から12月において同地域を撮像されたSentinel-1 SAR衛星データを使用しています。
解析手法
今回の解析ではSAR衛星からの電波の散乱強度(※1)やコヒーレンス値(※2)のデータを活用しています。散乱強度とコヒーレンス値それぞれのデータより台風襲来に伴って被害を受けたと想定される変化箇所を、散乱強度を青枠ポリゴン、コヒーレンス値をオレンジ枠ポリゴンで表示しています。
(※1)散乱強度:SARセンサから照射されたマイクロ波が地表などの境界線で散乱すること。散乱強度は境界面の粗さの影響を受ける。
(※2)コヒーレンス:2つの異なる時期における衛星から照射されたマイクロ波が、その位相の揃い具合によりどの程度の干渉性(干渉のしやすさ)をもつかを表す。
解析結果
台風襲来前後のSAR衛星画像を用いた2つの手法の解析結果から、どちらの地域においても広範囲に渡って被害があったことが想定されます。
まとめ
自然災害発生時においては、迅速且つ広域に被災状況を把握する事が適切な意思決定、初動対応へと繋がります。特に今回の台風のように広域な複数地域において被害があった場合や、雲に覆われた悪天候が継続する場合など、光学画像(衛星、航空機、ドローン等)が取得できないケースにおいては、SAR衛星データを用いた被害状況の解析は有効です。今後より高精度な判定アルゴリスムが提供できるよう引き続き自然災害発生時における被災状況の解析を進めます。
Synspectiveは、独自の小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行っており、すでに運用を開始した初号機を含め、2020年代後半までに30機の衛星コンステレーション構築を目指します。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域で災害が発生しても、2時間以内に衛星が到達し観測することが可能となります。
従来の光学衛星や航空機・ドローンによる観測方法とは異なり、SAR衛星は全天候型の地上観測が可能なため、より広い範囲での地盤変動等を迅速に把握することが可能です。