概要
衛星データを用いて構造物に関連した地表面・地盤の継時的なモニタリングや地滑りなどの地盤リスクを広域・面的に理解することが可能となるSynspectiveのソリューションサービス「Land Displacement Monitoring」(LDM)を用い、オーストラリア・シドニーの高速道路を対象に路面の変化を解析しました。
想定活用場面
一般道、高速道路は経年劣化に加え、交通による疲労、塩害、凍結防止剤の散布などの使用環境による老朽化が進行しています。特に先進国では近年、老朽化が急速に進んでおり、一般道、高速道路の維持管理・更新を計画的に進めていく必要があります。
保全業務として道路清掃、植栽作業、雪氷対策作業、交通事故・災害復旧工事など多岐に渡る活動が行われており、現在、パトロールカーによる車上目視・感覚による巡回点検と、専用の路面性状測定車による路面点検により安全を確保しています。また広範囲の道路を定期的に運航点検を行うことは限界があり、特に道路の大部分を占める市町村道を管理する地方自治体では全ての道路で調査を行うことは非常に難しい状況にあります。
一方で異常の見逃しによる再走行や発見の遅延、作業員のコスト高などといった課題があり、コストを抑える工夫も求められています。衛星を使ったモニタリングを活用することで、現在の保守点検からさらに精度向上、効率化を図ることが可能です。
解析結果
地形全体的な沈下傾向はないものの、高速道路上の路面に沿って沈下傾向であることが判明しました。下図において地図上に色付けされているポイントではそれぞれ、時系列での変動量を解析しており、白から赤にかけて濃くなるほど沈下傾向、青に近いほど隆起傾向を示しています。最も赤色の濃いポイントでは1年間で数十ミリの変動が出ております。IC周辺も沈下傾向が見られ、交通量の多さにより、路面に圧力がかかり変動が起こっていると考えうる結果となりました。
メリット
高速道路をLDMを用いて確認したところ、高速道路のIC付近(上記解析結果の青四角部分)で沈下傾向があることが分かりました。その一方で高速道路以外の箇所では異常が見られなかったことから、沈下傾向が強い箇所と、特に変動が見られない箇所を広範囲に確認することができました。この結果を用い、以下のような場面でも活用が可能です。
- 路面の維持管理費の削減
- 点のセンサ点検等だけでは掴めない面的な変動の兆候把握
- 常時監視によるアラートの発出
- 現地調査の優先順位付け支援
- 経年変化の理解による保守対象選定の支援
ソリューションの特徴
- 垂直/水平の四方向のミリオーダー級の変動傾向の解析が可能。
- 世界中の複数現場を同時に広域監視し、過去から現在までの経年変化の把握可能
- InSAR*解析技術システムの活用
- 日本初の空間的変動と時間的変動を掛け合わせた陥没可能性検出技術
- 人による確認や解析が不要な自動解析
- 直感的なユーザーインターフェース
- PDFレポートでの出力
*InSAR – Interferometric SAR(干渉SAR)の略。高精度で土地の変位を検出するSARデータ特有の処理技術の一つ。