概要

現在、世界的に再生可能エネルギー導入の機運が高まっており、その中で風力発電は注目されています。既にイギリスやドイツ、デンマークでは大規模な洋上風力発電が稼働しており、再生可能エネルギーの比率も高まっています。Synspectiveでは衛星から撮像したSAR画像を解析し、秋田県、山形県に接する日本海の洋上風速を推定しました。

 

想定活用場面

洋上風力発電におけるタービンの設置場所は発電量を左右する非常に重要なポイントです。日本の場合、現在事業者は国が定めるガイドラインに従って測定器を設置して風力を測定します。候補地域を面的に広範囲で測定することが適地選定にあたり大切な要素ですが、測定器は非常に高価(1本あたり数千万~数億の費用が発生)なため、多数の測定器を設置することができず、適地選定のためのデータが限られるという課題があります。SAR画像を用いることによって広範囲な海域に対して遠隔で洋上風速推定とモニタリングがm/s単位で行えます。高解像度かつ海面に近い風速の把握が行えるため、地形や他洋上風力発電群による影響の把握も定常的に行えます。洋上風力発電所の適地選定を行う上で重要となる風速データとしてご活用頂くことが可能です。今後はタービンの高さ、大きさを考慮した風力データの提供も予定しております。

 

解析手法

SAR画像の解析には衛星からの電波の散乱強度(※1)のデータを活用しています。散乱強度をもとに海面の波を捉え、モデル関数に当てはめて風速を推定します。

(※1)散乱強度

SARセンサから照射されたマイクロ波が地表などの境界線で散乱すること。散乱強度は境界面の粗さの影響を受ける。

 

解析結果

秋田県、山形県に接する日本海の洋上風速の解析結果です。赤く色付けした箇所が風速が強い箇所であり、沿岸地域の一部が筋状に風速が強いことを示しています。これは風が南東から南西に向かって吹いており、山の影や平地による風速へ影響が出ていると考えられます。SAR画像を用いることで地形等による風速への影響を100km以上に渡って推定でき、局所的に風が強い、弱い地点も把握が可能です。

 

まとめ

SAR画像から洋上風速を推定することにより、ある1か所の風速だけでなく沖合まで広く風速を推定することができ、面的に風速を把握することができます。また過去のデータを蓄積し、時系列での解析も可能です。広範囲で高解像度、かつ地形の影響や他洋上風力発電による影響を加味した風速データは洋上風力発電の適地選定をより確実なものとします。

 

Synspectiveは、独自の小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行っており、すでに運用を開始した初号機を含め、2020年代後半までに30機の衛星コンステレーション構築を目指します。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域でも希望するエリアに2時間以内に衛星が到達し、観測することが可能となります。従来の光学衛星や航空機・ドローンによる観測方法とは異なり、SAR衛星は全天候型の地上観測が可能なため、より広い範囲での地盤変動等を迅速に把握することが可能です。