Synspectiveの存在意義・社会的な役割の一つに衛星開発技術の次世代への伝承というのがあります。衛星製造のスペシャリストやシニアアドバイザーを積極採用することで、人工衛星を知らない異業種で活躍する人材や経験のない若手のポテンシャル採用が可能となり、モノづくりを次世代に繋いでいくことができるのです。また、コンステレーション構築を推進しているSynspectiveにおいては、小型SAR衛星の量産体制づくりが急務です。従来の人工衛星は、ひとつひとつカスタムメイドで作られていました。それを一度に複数機生産するためには、品質を保ったまま、スピーディに生産しなければなりません。これは世界的にも先駆的な取り組みであり、ここに、ベテラン技術者たちの知見が生きてきます。今回は、衛星製造のスペシャリスト・飯吉 政春さんにお話を聞いてみました。
飯吉 政春, AIT Unit マネージャー
1973年以降、宇宙開発機器の組立てに50年以上従事。宇宙開発機器の中でも、高い精度が求められるワイヤーハーネスのハンダ付けや、図面の上では表すことが難しい組付けなど、特に経験と勘が必要とされる手作りの製作作業を担当してきた。その職人技が認められ、2006年には、厚生労働大臣より「卓越した技能者(現代の名工)」として表彰され、その翌年にはその道一筋に業務に精励し、衆民の模範となる者を対象とする黄綬褒章も受章。2021年Synspectiveに入社し、以来、衛星システム開発部でStriXの製造をけん引しています。
この仕事を選んだきっかけ、そして、これほど長く、宇宙開発機器、とりわけ人工衛星の製造一筋にやってこられた情熱の源は何ですか?
学生の頃、友人の影響でアマチュア無線を始め、通信機器に興味があったということ。加えて、ジグソーパズルやプラモデルなど細かな作業が複雑であればあるほど面白いと感じるタイプだったのと、単調な作業を繰り返すのは苦手だったので、この世界に入ったのは必然的だったかもしれません。そのうえで、長く続けて来られたのは、やっぱりこの仕事が好きだからです。人工衛星は一つ一つがオーダーメイドなので、常に変化と新しい気づきがあり、だからこそ自分の技術に決して満足することがないというのも長く続けられている理由だと思います。
衛星製造にかける思いやこだわりを教えてください。
出来栄えが美しくなるよう仕上げることです。購入品を組み付けるため毎回微妙に形状が異なっているため、完成状態をイメージして過去の経験値や最適解を考えながら組み立てを実施しています。
45年にわたって、衛星製造の第一線で活躍する飯吉さんがスタートアップのSynspectiveに入社されたきっかけを教えてください。
Synspective初の小型SAR衛星「StriX-α」の開発にサプライヤーの一社として携わる中で、私よりもずっと若いメンバーたちがひたむきに試行錯誤している様子を間近で見ていました。そんな彼らから「力を貸してほしい」と言ってもらったことがきっかけです。それに、「関わったからには最後までやりきる」という性格も影響していると思います。
業界経験の豊かな飯吉さんの目から見た、Synspectiveの良いところ、そしてこれから解決すべき課題を教えてください。
Synspectiveの製造現場には、高い志を持った若手が集まっています。そこはすごく良いところだし、どんどん自分の技術を吸収してほしいと思っています。
ただ、優れた人工衛星を作るためには、まだまだ人材も技術も足りていないと感じています。まずは社内にものづくりのための基盤を作ることが急務です。
飯吉さんのチームのミッションをもう少し詳しく教えてください。
私のチームは衛星製造に特化していて、まずは計画に沿って製造を進めることが最優先です。加えて、Synspectiveのものづくりの基盤を作っていくこともミッションとし、ベテランから若手への知識や技術の継承ということにも注力します。それはSynspectiveだけでなく、どの会社でも求められていることなので、私は以前「職業訓練指導員」の資格を取得しました。それを生かして、専門性と技術力の高いチームを作っていきたいです。
チームが製造の要となるために、どのようなチーム作り、運営を思い描いていますか?メンバーに対する期待も含めて教えてください。
良い衛星を作るということはもちろんのこととして、マネージャーとして後進の育成に真摯に取り組んでいきたいと思っています。一方で、彼らには私から「教わる」という受け身の姿勢ではなく、技術を吸収した上で、さらに上を目指すためにはどうしたらよいか、自分のカラーを出すためには何ができるかを追及する野心を持ってほしいですね。私も自分の技術に満足することはありません。チームとして成長し、Synspectiveにおける衛星製造の基盤を作るために、お互いに高め合っていこうと伝えたいですね。
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