Scenes and Signalsのシリーズでは、これまで主に米国市場の視点から、データフュージョン、変化検出、災害対応におけるSARの能力を取り上げてきました。本回では、Synspectiveのラテンアメリカの責任者であるTata Lacaleが、同地域に焦点を当てた新たな連載をスタートします。今後は、南米市場、ユースケース、そして地域特有のニーズなどについて、さらに掘り下げていく予定です。
2年前、ラテンアメリカで合成開口レーダー(SAR)の話題を切り出すときは、まず「SARとは何か」という説明から始めるのが通例でした。しかし今では、政府機関、公益事業者、環境関連機関がパイロット段階を脱し、業務ワークフローのなかでSARデータを運用するようになっています。SAR衛星データを活用する環境はすでに整っているのです。私が関わる多くの国で遅れているのは、データが示すものに基づいて行動するための組織的な準備状況のほうです。
過去2年間の流れを最もわかりやすく示しているのが、アマゾン熱帯雨林です。ブラジル国立宇宙研究所(INPE: National Institute for Space Research)の報告によれば、2025年7月までの12か月間の森林伐採面積は、PRODES(Program for Monitoring the Brazilian Amazon Forest by Satellite) モニタリングプログラムに基づいて10年以上ぶりの低水準となり、前年から11%減少しました。一方で、皆伐(かいばつ:一定の区域にある樹木を一度にすべて伐採する林業の収穫手法)の減少を確認した同じ調査では、火災や択伐(たくばつ:成熟して木材として利用できる木や、成長の悪い木などを選び出し、森林の一部を伐採・収穫する方法)に起因する森林劣化が急増していることも明らかになっています。これらは通常の光学衛星では捉えにくく、雲に隠れて見えなくなることが多いプロセスです。アマゾン熱帯雨林の一部地域では、年間80%以上にわたって雲がかかり続け、こうした劣化の多くは夜間や、光学センサーが透過できない天候下で進行します。

レーダーは雲も暗闇も透過し、高頻度の再訪を組み合わせれば連続的な観測を実現できます。衛星データに不慣れな顧客に変化検出を説明する際、私がいちばん有効だと感じている表現は、「宇宙から撮影したビフォー・アフターの画像を、数週間ではなく数時間以内に対応できるほど頻繁かつ確実に取得できるもの」というものです。データが届くまでのスピードが劇的に速くなり、いつでも手に入るようになったことこそ、ここ数年で起きた変化です。保護区域に違法な滑走路が出現したとき、エネルギーのパイプラインに侵入の兆候が見られたとき、土砂崩れで被災地への道路が遮断されたときなど、衛星はそれを数時間以内に捉えることができます。それでも依然として難しいのは、その画像をもとに行動する権限・ライセンス・ワークフローを担当機関が備えているかどうか、という点です。
地域全体の顧客が抱える課題は、共通したものへと集約しつつあります。アマゾン流域の環境関連機関にとっては、違法な森林伐採と農地拡大が最優先課題です。違法採掘も同様に深刻化しており、環境取締り、法執行、さらには国家安全保障にまで関わるテーマとなっています。確認されている事例の多くは金の採掘で、ブラジル、コロンビア、ペルー、ベネズエラで活動が記録されています。こうした採掘は、河川沿いの小規模なキャンプから始まり、伐採地、坑、進入路、そして資材や金を運び出すための違法滑走路へと拡張していくのが一般的です。河川では浚渫(しゅんせつ)機が堆積物をかき乱し、水質を汚染します。むき出しになった土壌、直線的な構造物、かき乱された川底。これらがレーダー電波を特殊に跳ね返すことで生まれる『特有のサイン』は、いずれもSAR画像にくっきりと浮かび上がります。さらに、過去からのデータの変化を分析すれば、拡大する採掘現場と、自然に木が枯れただけの場所を見分けることも可能です。

エネルギーインフラの健全性は、ブラジル、チリ、アルゼンチンの公益事業者にとって優先課題です。これらの国では、送電線や送配管が地上や航空からの巡回が困難な地形を数千キロにわたって走っています。典型的な例は、送電線や送配管の事業者がSARを用いて用地内の植生侵入や無許可建設を監視し、サービスへの脅威を未然に防ぐというものです。SARは雲の下でも樹冠の密度の変化や新たな(侵入路などの)直線や、(違法建築などの)四角い構造物を検出できるため、事業者は送電線が危険にさらされる前に植生を除去したり、建設を停止させたりすることができます。広大な遠隔地における国境警備と状況認識は4つ目のカテゴリーであり、10か国と国境を接するブラジルの陸上国境のような地形がその中心にあります。同国境の長さは1万6,000キロ以上に及び、米加国境の約2倍、米墨国境の約5倍、ロシア・ウクライナ国境の約7倍にあたります。

国ごとに重点の置き方は異なりますが、その根底にあるドライバーは一貫しています。各国が求めているのは、天然資源の保護、エネルギー安全保障の確保、そして環境犯罪への対処であり、これら3つの関心領域は次第に重なり合うようになっています。本シリーズの今後の記事では、こうしたユースケースのいくつかをより深く掘り下げていきます。
ラテンアメリカにおけるSynspectiveの活動は、国家安全保障・防衛プログラムへの直接的な関与と、商業・政府エンドユーザーとのラストマイル統合を担う現地パートナーとの連携を組み合わせる形で拡大しています。
私が繰り返し感じているパターンは一貫しています。技術はすでに存在し、ユースケースは明確で、買い手の準備も整っています。求められているのは、課題のテンポに見合う組織的なインフラであり、それは今まさに構築されつつあります。調達制度は**自動化されたデータパイプラインの導入**に適応しつつあり、解析者はSARデータを扱うためのトレーニングを受け、業務ワークフローは年次調査ではなく、週ごと、あるいは日ごとの(衛星による)定期観測を前提として再構築されています。こうした調整が定着したとき、変化検出は危機の際に各機関が手を伸ばす「ツール」であることを超え、日々の業務を支える「インフラ」として機能するようになるでしょう。
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Tata Lacale Canalは、リオデジャネイロを拠点にSynspectiveのラテンアメリカ事業を統括しており、同地域における商業地球観測およびSARデータサービスにおいて20年以上の経験を有しています。