AIT Engineer 飯吉 政春

今年4月、衛星システム開発第二部にStriXの製造に特化したユニット「Team X3」が新設されます。この新ユニットを率いるのが、50年に亘り、宇宙開発機器の組立てに従事してきた飯吉 政春さん。

まずは、読者の皆さんに私から飯吉さんの紹介をさせてください。

飯吉さんは昭和48年(1973年)以降、50年に亘って宇宙開発機器の組立てに従事されています。その中でも、高い精度が求められるワイヤーハーネスのハンダ付けや、図面の上では表し難い組付けなど、特に経験と勘が必要とされる手作りの製作作業でまさに職人技の世界で、平成18年に厚生労働大臣から「卓越した技能者(現代の名工)」として表彰されています。また、平成19年にはその道一筋に業務に精励し、衆民の模範となる者を対象とする黄綬褒章も受章されています。

Synspectiveとの出会いは、サプライヤーの一社として「StriX-α」の開発・製造をサポートするようになったのがきっかけ。1年半ほど前に正式にジョインし、以来、衛星システム開発部でStriXの製造をけん引しています。

この仕事を選んだきっかけ、そして、これほど長く、宇宙開発機器、とりわけ人工衛星の製造一筋にやってこられた情熱の源は何ですか?

飯吉さん:学生の頃、友人の影響でアマチュア無線を始め、通信機器に興味があったということ。加えて、ジグソーパズルやプラモデルなど細かな作業が複雑であればあるほど面白いと感じるタイプだったのと、単調な作業を繰り返すのは苦手だったので、この世界に入ったのは必然的だったかもしれません。そのうえで、長く続けて来られたのは、やっぱりこの仕事が好きだからです。人工衛星は一つ一つがオーダーメイドなので、常に変化と新しい気づきがあり、だからこそ自分の技術に決して満足することがないというのも長く続けられている理由だと思います。

衛星製造にかける思いやこだわりを教えてください。

出来栄えが美しくなるよう仕上げることです。購入品を組み付けるため毎回微妙に形状が異なっているため、完成状態をイメージして過去の経験値や最適解を考えながら組み立てを実施しています。

45年にわたって、衛星製造の第一線で活躍する飯吉さんがスタートアップのSynspectiveに入社されたきっかけを教えてください。

サプライヤーとして「StriX-α」の開発に携わる中で、周りから「力を貸してほしい」と言っていただいたことがきっかけです。それに、「関わったからには最後までやりきる」という性格も影響していると思います。

業界経験の豊かな飯吉さんの目から見た、Synspectiveの良いところ、そしてこれから解決すべき課題を教えてください。

Synspectiveの製造現場には、高い志を持った若手が集まっています。そこはすごく良いところだし、どんどん自分の技術を吸収してほしいと思っています。ただ、優れた人工衛星を作るためには、まだまだ人材も技術も足りていないと感じています。まずは社内にものづくりのための基盤を作ることが急務です。

そのための対策の一つが、今回の「Team X3」新設でしょうか。X3のミッションをもう少し詳しく教えてください。

X1はメカ設計主体で、X2はプロセス技術(製造技術)で製造をサポートする機能になり、X3は製造に特化します。それぞれのチームが独立運営することで、メンバーの作業が整理され、必要なことに集中することができます。その中でも、X3は計画に沿って製造を進めるのはもちろんのこと、Synspectiveのものづくりの基盤を作っていくことをミッションとし、知識や技術の継承ということにも注力します。それはSynspectiveだけでなく、どの会社でも求められていることなので、私は以前「職業訓練指導員」の資格を取得しました。X3ではそれを生かして、専門性と技術力の高いチームを作っていきたいです。

「Team X3」が製造の要となるために、どのようなチーム作り、運営を思い描いていますか?メンバーに対する期待も含めて教えてください。

良い衛星を作るということはもちろんのこととして、マネージャーとして後進の育成に真摯に取り組んでいきたいと思っています。一方で、彼らには私から「教わる」という受け身の姿勢ではなく、技術を吸収した上で、さらに上を目指すためにはどうしたらよいか、自分のカラーを出すためには何ができるかを追及する野心を持ってほしいですね。私も自分の技術に満足することはありません。チームとして成長し、Synspectiveにおける衛星製造の基盤を作るために、お互いに高め合っていこうと伝えたいですね。