概要
衛星データを用いて広域の地盤変動を解析し、地表面・地盤の継時的なモニタリングや地滑りなどの地盤リスクを広域・面的に理解することが可能となるSynspectiveのソリューションサービス「Land Displacement Monitoring」を用い、世界の10大鉱山に数えられるペルーのアンタミナ鉱山の地盤変動を解析しました。
想定活用場面
鉱業の採掘現場では、人為的あるいは自然発生による地盤の変化で思いがけない事故の発生、また時には人命が脅かされる可能性もあります。
- 2013年に米国ビンガム・キャニオン鉱山の大規模な地滑り
- 2019年にブラジル鉱山ダムが決壊し、汚泥が町へ流下
特にブラジル鉱山ダムの決壊では資源大手企業が州に対して約377億レアル(約7300億円)の賠償金を支払う事態となっています。
このような事故を回避するためにGNSSセンサー、LiDAR、ドローン等によるモニタリングが一般的ですが、一度に観測できる範囲が限られ、データ取得には費用を要すること、観測タイミングは天候に大きく左右されることなどが課題となっています。さらに機器の設置やドローンを用いたデータ取得は現場に出向く必要があり、本社と現場の距離が地理的に離れていることで高頻度のデータ取得が難しくなっています。
SAR衛星(合成開口レーダー)は夜間や悪天候時においても遠隔からデータを取得でき、画像解析をすることで採掘現場周辺の変動を把握することができます。
SAR衛星を活用した当社のLand Displacement Monitoring (地盤変動モニタリング)ソリューションは、膨大な情報の処理・解析技術やクラウドを組み合わせることで宇宙から現場の変化を定期的に観測することが可能で、解析結果はプラットフォーム上に表示され、直観的、視覚的に操作、理解することができます。
解析結果
地形全体的な沈下傾向はないものの、下図の解析結果においてオレンジから赤にかけて色が濃くなっているほど沈下傾向を表しています。特に鉱山の斜面は継続的な著しい沈下傾向があり、グラフからもわかるように1年間で20㎝程の沈下が発生しています。こういった継続的な沈下傾向が見られる箇所では、追加でより詳細な調査が必要な場合もあると考えられます。
メリット
ペルーのアンタミナ鉱山を「Land Displacement Monitoring」を用いて確認したところ、全体的な地盤変動はないものの、採掘地での沈下傾向やテーリングダムの淵の変位が見られました。この結果を用い、以下のような場面でも活用が可能です。
- 鉱山斜面における地すべりリスクの早期検知
- テーリングダム決壊リスクの早期検知
- 常時監視によるアラートの発出
- GNSSセンサやドローン点検と組み合わせた広域監視
- 経年変化の理解による保守対象選定の支援
ソリューションの特徴
- 垂直/水平の四方向のミリオーダー級の変動傾向の解析が可能
- 世界中の複数現場を同時に広域監視し、過去から現在まで経年変化の把握が可能
- In-SAR解析技術システムの活用(日本初の空間的変動と時間的変動を掛け合わせた変動可能性検出技術)
- 人による確認や解析が不要な自動解析
- 直感的なユーザーインターフェース
- PDFレポートでの出力