概要

採掘現場では、人的および自然要因による地盤変動が、予期しない事故や災害を引き起こすことがあり、時として人命にかかわることもあります。地盤の動きや変形によって、採掘作業の安全性、安定性、効率は重大なリスクにさらされます。World Mine Tailings Failure(世界採鉱産業尾鉱事故)に掲載された報告によると、鉱業では、特に尾鉱貯蔵施設(TSF)内での事故の頻度と重度が増大する傾向にあり、懸念が高まっています。

 

 

(Source: 出典:World Mine Tailings Failure)

 

SAR衛星は、鉱業において効果的な地盤変動測定の観測ツールとして利用することができます。近年では、様々な情報通信技術(ICT)やIoTソリューションが、スマート採掘作業を実現するために採用されていますが、地理的に離れた場所に点在する複数の採掘プラントをネットワーク化しなければならないため、資源と効果を最適化することが困難です。

Synspectiveは、2020年に最初の Land Displacement Monitoring (LDM)ービスを開始しました。このサービスでは、画像解析を利用することで、費用対効果が高く、ミリ単位での地盤変動のモニタリングが可能です。Syspectiveのクラウドベースのデータプラットフォームを使用することで、顧客は時系列の変動を追跡し、パターンを見つけ出し、状況を詳細に理解することができます。さらに機械学習を用いることで、情報が自動更新され、重要な識見を引き出し迅速な決定をすることができます。

 

現在の課題

近年では、不測の事故や災害を防ぐため、GNSSセンサー、LiDAR、ドローンによるモニタリングが一般的になっていますが、まだ課題は残っています。一回につき観測できる範囲が限られており、データ入手が高価で、天候も観測のタイミングに大きく影響します。さらに、現地に出向いて機器を設置したりドローンのデータを収集したりしなければならず、本社と採掘現場が遠い場合、頻繁なデータ収集が困難です。

LDMに使用されている干渉SAR技術は、費用対効果が高く正確なソリューションであることが証明されており、高精度かつ高頻度で地盤変動を観測することができます。LDMを使ってデータを融合することで、より深い識見を得ることができ、ユーザー自身のセンサーデータを取り込んでソリューションの精度を高めることもできます。

 

ソリューション

Synspectiveは、LDMサービスの干渉SAR技術を利用して、将来有望なダム決壊観測技術を確立することに成功しました。これにより、出来事の前兆をとらえ、リスク防止と軽減のための活動を支援することができます。

採掘企業や科学者らによる災害前後の研究では、尾鉱ダムの壁付近の漏出やダム全領域での地盤変動が生じていたと結論づけられました。SynspectiveがLDMサービスを使った解析結果は、他の科学的研究結果と一致しており、干渉SAR技術を利用した地盤変動観測により、幅広い領域の地盤情報を低コストでより高いデータ密度と頻度で提供できる可能性が生まれました。これにより、異常が検知された場合、現地確認作業をより正確に選択することができます。

Synspectiveは、ダム決壊の時期は、衛星搭載の干渉SARデータを使って現場の変動前兆データを観測していたら、予測可能だったと考えています。衛星観測技術を既存のICTやIoTソリューションと組み合わせることで、将来、同様の大災害を軽減することができます。

干渉SAR解析、機械学習、クラウド技術を組み合わせ、迅速な意思決定を行い、自動プロセスを支援することで、異常変動を検知し災害を防ぐ行動を迅速に実施することができます。また衛星画像により、発災後に新たなリスク地点の情報を提供しそれを未然に防ぐことで、被災地の復旧に役立ちます。SAR衛星データは採掘場の現象分析に利用でき、費用対効果の高い地盤変動観測を提供します。

宇宙から撮影された衛星画像は、災害予知や災害後の現場復旧だけでなく、多岐にわたって活用されています。高解像度のSAR衛星画像は3メートルほどしかない備蓄品の変化でも検知することができ、重要な需給情報を提供します。鉄鉱や石炭などがどの程度備蓄されているかを追跡し、正確性と最適なレイテンシーで出荷できます。これを機械学習モデルと組み合わせてあらゆる変化を数量化すると、採掘企業は、情報を自動更新しビジネスの最重要事項を迅速に決定することができます。

実際、上記の観測は、需要と供給のバランスを改善し、生産方法の効率化につながります。それによって、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12「責任あるイノベーションと生産」に貢献することができます。

SARデータは、採掘場でのリスク軽減に加えて、採掘作業のモニタリングと生産性向上に寄与します。衛星観測を使って坑内の大きさを正確に計算し生産レベルを追跡することで、生産指数の維持につながります。坑内の変化を捉え、指定した採掘箇所の採掘生産指数に換算することもできます。

 

メリット

  • 鉱山スロープの地すべりリスクの早期検出
  • 尾鉱ダム決壊リスクの早期検出
  • アラート発報を伴う定期的モニタリング
  • GNSSセンサーとドローン点検を組み合わせた広範囲のモニタリング
  • 長期的変化の分析によるメンテナンスターゲット選択のサポート

ソリューションの特徴

  • ミリ単位の精度で水平・上下方向の地盤変動の傾向を分析できる
  • 地球上のあらゆる地域の複数の採掘場を同時に観測し、長期的な時系列の変化を分析できる 
  • 干渉SAR解析技術システムの利用(シンクホールを検出できる日本発の技術)
  • 自動解析
  • 直感的ユーザーインターフェイス
  •  PDFレポート

 

まとめ

現在、尾鉱ダムやその他の採掘施設は、測量標、傾斜計、ピエゾメーター、地上設置レーダーなどを含む様々な方法を組み合わせて観測されています。一方で、過去、それらの観測方法では事故に繋がる重要な変動や他の予兆を検出することが難しいという課題があります。Syspectiveでは、SARのデータを使って事象の進行状況を分析し、前兆となる変動を観測することで、ダム決壊の時期は予測できるということが分かりました。そして、衛星モニタリングを既存のICTやIoTソリューションと組み合わせることで、将来、同様の大災害を軽減することが可能です。

Synspectiveでは、採掘企業がSAR衛星データを利用することで効率的な鉱業運営と資源のプラニングや管理に寄与すると考えています。

 

筆者について

Abhinandan Aryaアブヒナンダン・アリャ- 

 Vice President of Applied Science at Synspective 

弊社SAR衛星コンステレーションを使用したコアソリューションの研究開発責任者。インド工科大学(IIT)コンピューターサイエンス・工学部電気電子工学科卒業。テキサス大学オースティン校人工知能および機械学習PGP(大学院プログラム)課程修了。

 

 

SARデータ解析による、災害発生前の地盤変動から災害予兆変動を検知する”斜面不安定性検知機能”を開発

地すべり災害に対するInSAR解析のユースケース