概要
2022年1月14日から15日にかけて、南太平洋の島国トンガのフンガトンガ・フンガハアパイ火山で大規模な噴火が発生しました。特に現地時間1月15日17時頃に発生した大規模噴火の噴煙は約20kmの高さまで上昇、半径約250kmに拡散し、その衝撃波はペルーやアメリカなど世界各国において潮位変化をもたらしました。日本では16日午前0時過ぎに津波警報・注意報が発令される事態となりました。この大規模噴火の影響で、現地トンガでは大規模な停電や通信に影響がでたほか、同国の広範囲に渡って約1m程度の津波が観測された、と報じられています。被害に遭われた皆様には心からお見舞い申し上げるとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
今回のフンガトンガ・フンガハアパイ火山における噴火状況について、Synspectiveの災害解析チームが解析を実施しました。衛星観測データは、噴火前の2021年12月上旬から噴火後の2022年1月15日にかけて4回に分けて撮像されたSentinel-1 SAR衛星データを使用し、噴火活動による島周辺の形状変化について解析しました。
解析手法
今回の解析ではSAR衛星からの電波の散乱強度(※1)のデータを活用しています。散乱強度より噴火活動に伴って島周辺で生じたと思われる変化箇所を青枠ポリゴンで表示しています。
(※1)散乱強度:SARセンサから照射されたマイクロ波が地表などの境界線で散乱すること。散乱強度は境界面の粗さの影響を受ける。
2021年12月10日-2021年12月22日
2021年12月22日-2022年1月3日
2022年1月3日-2022年1月15日
解析結果
海底火山噴火前後のSAR衛星画像を用いた解析結果から、噴火活動の影響で長期にわたり島周辺の形状が変化していることがわかります。一枚目の解析結果から最初の噴火は2021年12月20日に発生し、その際に島が大きくなったことが推測されます。二枚目の結果からは年末年始にかけて噴火活動は一時沈静化したため、島の大きさも小さく変化していることが想定されます。そして1月14、15日の大規模噴火では島全体にかけて変化を検出しています。今後もそれぞれの解析結果の精査を行いながら、より高精度な判定アルゴリズムを検討していく予定です。
まとめ
噴火活動が継続する場合や曇天等により光学画像(衛星、航空機、ドローン等)が取得できないケースにおいては、SAR衛星データを用いた噴火活動モニタリングは有用であると考えられます。特に今回の様な遠い海上における噴火活動の場合は衛星データが最適です。
Synspectiveは、独自の小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行っており、すでに運用を開始した初号機を含め、2020年代後半までに30機の衛星コンステレーション構築を目指します。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域で災害が発生しても、2時間以内に衛星が到達し観測することが可能となります。
従来の光学衛星や航空機・ドローンによる観測方法とは異なり、SAR衛星は全天候型の地上観測が可能なため、より広い範囲での地盤変動等を迅速に把握することが可能です。