内閣府の研究開発により誕生
Synspectiveは、内閣府の革新的研究開発プログラム「ImPACT」(以下、ImPACTプログラム)の研究成果の社会実装を目指し2018年に設立されました。
私たちの小型SAR衛星「StriX(ストリクス)」は、ImPACTプログラム以来、JAXA、東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学等との連携により、性能・コスト・製造容易性を意識した開発が進められています。
折り畳み可能なSARアンテナ、高出力化と高度な熱制御等により、衛星サイズの小型化と大型SAR衛星と遜色ない撮像能力を実現しています。また、搭載機器開発と既製品の積極利用、並びに小型化により低コスト化に成功しました。
重量は、従来のSAR衛星の約1/10である100kg級で、コスト面は、開発と打上げ費用を合わせ、大型のものと比較し約1/20を実現しています。
フクロウに由来する“StriX(ストリクス)”
私たちのSAR衛星[StriX(ストリクス)]は、フクロウの学名である「Strix uralensis」にちなんで名付けました。
フクロウは聴覚および視覚が非常によく発達しており、完全な暗闇(くらやみ)の中でも採食することができます。夜間でもモノが見えるというフクロウの特徴はSARの特徴でもあります。また広げたアンテナが鳥の翼に見えるといったところも名前をつけた由来になります。
そして、フクロウは知恵のシンボルとも呼ばれます。ギリシャ神話に登場する知性や学問の女神のアテナは、人々が賢くなるよう力を尽くし、必要なときには知略に富んだ武器や道具を与えました。そのアテナの聖鳥として、使者や化身となったのがフクロウと言われています。
特徴
衛星スペック
重量 | 100kg級 |
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サイズ | 約800mm × 1,000mm × 800mm (軌道投入前) 約5,000mm × 1,000mm × 800mm (軌道投入後) |
アンテナサイズ | 約5m × 0.8m |
推進装置 | あり |
活動期間 | 約5年 |
センサー仕様
中⼼周波数 | 9.65 GHz (Xバンド) |
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撮像方向 | 左右 |
PRF | 7 kHzまで |
チャープ帯域幅 | 300 MHzまで |
RFピーク電⼒ | 1kW |
偏波 | VV |
オフナディア角 | 15〜45度 |
SAR衛星の小型化と多数機生産に適した設計
大手宇宙機メーカーが世界中に存在している中、小型SAR衛星がこれまで実現されなかったのは、大型と同等の撮像が可能なSARアンテナ開発と高度な熱制御が大きな障壁となってきたためです。
Synspectiveの小型SAR衛星”StriX”は、これまでの大型衛星に比べて重量比で約1/10の小型化を達成しており、展開時には大型SAR衛星と同等の5mになる折り畳み方式のアンテナ(展開型スロットアレーアンテナ)を採用し、1kW級の高出力アンプを搭載、さらにバランスのとれた熱制御を実現しました。品質安定性に優れており、軌道上でも故障可能性が小さく、多数機の安定的生産・運用に強みがあります。
他社の小型SAR衛星と比べ観測幅が5倍以上
大電力・大容量バッテリによる多地点・広域撮像能力
私たちは平時でのモニタリングや災害時の観測において、広域での撮像能力は非常に重要だと考えています。合成開口レーダーでは、発電・蓄電能力が観測可能面積の制約になります。1kW級の高出力アンプを搭載するStriXは、約2倍の太陽電池セルを搭載し、それに見合う大容量バッテリを搭載しております。
これにより1観測辺りの観測幅も他と比べ5~6倍と大幅に広く、総合して2~10倍の観測可能面積を有します。この特徴により長期観測・多地点観測が可能です。
宇宙空間で広がる強固かつ量産に向いたアンテナ
StriXは、SARアンテナとして7枚の独立パネルから構成される展開型スロットアレーアンテナを採用しています。軌道投入前は約80cm四方の立方体となっており、軌道投入後、宇宙空間で折りたたまっていたパネルが展開されます。
このアンテナは、アンテナ表面の電波射出スロットと導波管の設計時に電波位相を考慮した緻密な物理計算が必要である一方、一度設計が完了すれば製造や検査が容易という特徴があります。また、他方式と比較して軽量で部品点数が少なく、電子機器への依存性が低いことや構造的に頑強であることがその特長に貢献しています。
世界トップレベルの技術力と開発スピード
会社設立から3年弱で打上げ・軌道投入成功・日本初の画像取得成功へ
StriXは、内閣府ImPACTプログラムでJAXA・各大学の宇宙開発経験豊富な有識者が開発した技術を導入しました。低コスト化・短納期化実現を前提とした部品選定をしつつ、放射線・真空・振動などを考慮した高品質製品を開発し、実証初号機(StriX-α)で軌道上実証も完遂しました。
また、Synspectiveはスタートアップ企業として、スピードを重視しています。SAR衛星の開発に携わるメンバーが過去に使用経験があり、宇宙での動作実績・コスト・納期に優れた技術を選定します。これにより複雑な検討作業や開発期間を省略し、会社設立後3年弱という短期間で、実証初号機から確実な動作を達成しました。
多数機生産へ向けた新たな設計と体制作り
私たちは今後2020年代後半に向けて30機の小型SAR衛星コンステレーションの構築を目指しています。
多数機を製造するシステムもまたスピーディに開発しています。
Synspectiveでは、宇宙開発経験10~20年のベテランと航空機・自動車・家電製品開発経験者の融合による開発体制を構築しました。また、大手自動車企業及び関連企業、宇宙大手企業との協業により、技術・人的リソースを獲得し、衛星を開発しつつ、多数基生産体制を構築しています。
衛星自体もまた進化を遂げるべく日々研究と開発が進められています。
打上げられた全ての衛星が成功
着実に成果を出し続ける開発チーム
衛星開発において最も重要なのはチームです。多くの異なるスキルと専門知識が必須となる衛星開発ではさまざまなバックグラウンドを持つメンバーが協力する必要があります。この異なるスキルの組み合わせが開発と改善に貢献します。
また開発において問題が発生することは避けられません。ですが、強いチームであれば問題を迅速に議論し解決策を見つけられる力を持っています。
私たちは開発現場において、お互いを尊重し合い、速い問題解決と迅速な反応、そして責任とコミュニケーションを大切にし、共通の目標に向かって協力し会えるチームを大切にしています。
この文化はチームだけでなく、Synspectiveの会社全体を通して一貫しており、CREDOとして反映もされています。